落穂ナム
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それを言うならどこで寝るんですかだろう、と思いはしたが、先程その問いを投げ捨てたのを思い出した。半分瞼を閉じながらもニヤリと笑う藤丸の顔は悪戯なもので、確信的にその言葉を選んだのだとわかる。
「--そうするか」
「え」
こたつで寝るつもりだったが、多少からかってやってもいいだろうし何よりこの寒さであればその暖かさは魅力的だった。一晩、大きな猫がいるようなものだと思えば何ということもない。
電気を消して、馴染んだ布団に潜り込む。藤丸が温めていたおかげで冷たさに震えることもない。誘った本人は、体を固くして息を殺しこちらを伺っている気配がした。
「この歳になって現場に堪えきれず人肌が欲しいなどと思わん」
安心させるために言ったつもりだったが、
「未熟者ですみません」
どうも喧嘩を売ったようにとられてしまったようで、むくれたような声が返ってきた。まあ機嫌を気にしたところで仕方がない、と目を閉じたところで、藤丸が否定しなかったことに気づいた。
目を開くと、一瞬合った目が逸らされる。それならそれで良い。再び目を閉じ、半ば強引に腕の中に身体を納める。すこし抵抗するそぶりはあったが、すぐにやんだ。

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「こっちに一如して」などと言っていたらドメインが取れることに気づいてしまったので作ったインスタンス