落穂ナム
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同じ布団に柳生警部が寝ている。言葉の綾でこんなことになってしまった。無欲そうに見えたけれど、このまま奪われてしまうのだろうか、といった心配は杞憂だった。人肌などなくても平気だ、という言には暗にお前でもあるまいしと言われているようで、居心地が悪かった。

そう。たしかにほっとした。生きている人の気配に、その熱量に。

素直に未熟であることを詫びると、すぐに警部は目を閉じた。そこそこ歳だし、私も手間をかけさせたし、疲れたのかもしれない。最後の任地だと言っていたけれど、いくつぐらいなんだろう。いつも現場に出ているからか、その寝顔はあんまり歳を感じさせなかった。
じっと観察していると、突然ぱちりと開いた目とまともに目が合ってしまったけれど、どうしていいかわからない。わからないまま、背中を抱き寄せられて肌が近くなる。気が変わったのかと、慌てて抵抗してみたものの、それきり何もしてこなかった。
様子を伺ううちに規則正しい寝息が聞こえてくる。目の前の胸元にそうっと耳を寄せると力強い鼓動の音がする。背中に添えられた腕は暖かく、またうとうととした眠気が私を襲う。
案外、寝心地のいい夜になりそうだった。

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「こっちに一如して」などと言っていたらドメインが取れることに気づいてしまったので作ったインスタンス