落穂ナム
Follow

左肩の痛みと腹側の温さで目が覚めた。身体をずらすと赤い髪が見える。少し動いてもぴくりともしない。よく眠っている。役目は果たせたようだ。
そのまま布団を出ようとしたが、困ったことが二つ起きた。一つは、藤丸の手が俺の上衣を握りしめていて離す気配がないこと、もう一つは昨夜は気にならなかった女の甘い香りが立ち上ってきたことだった。背筋が痺れ、下腹に血が回る。もう少し口説いていたならばともかく、ようやくここまで懐かせたところで犯すのは悪手である。
「藤丸」
やむを得ない。細い肩を揺さぶって起こすと、眉間に皺を寄せながら薄く瞼が開いた。
「手を離せ」
言いながら、握りしめられた指を開かせるように手を添える。すぐに指が開きはしたが、
「おはようございます……」
今度は胸元に顔を擦り寄せてくる。昨夜思った通り、まるで大きい猫だった。しかし猫ではないから愛でるのは都合が悪い。
「藤丸」
「ふぁい」
呑気にあくび混じりの返事を返した彼女に、
「起きたいのだが」
要望を伝えると、んんん、とぐずるように呻いてから、ころんと離れた。眉間に皺を寄せたその顔はいかにも不服であることを伝えていて、少し笑ってしまった。

Sign in to participate in the conversation
ichinyo.site/但馬守に斬られたい人たち

「こっちに一如して」などと言っていたらドメインが取れることに気づいてしまったので作ったインスタンス