落穂ナム
Follow

本当に同じなんだろうか。見上げた警部の顔はいつもと同じで、よく分からない。分からないけれど、なんとなく本当のことのような気がした。
「帰るぞ。こんなところでぼんやりしていると風邪を引く」
足を止めたのは自分のくせに、すたすたと警部が歩き出す。私が小走りで追いつけるぐらいのスピードで。
捕らえたいわけではない。殺したいわけではない。どうしたいかなんて決まっているけれど、私たちは大人だ。誰かに何かを強制することなんてできないし、できうる限り自分の思いのままに生きる権利がある。だったら、仕方がない。限りなくそれを尊重しながら、嫌なものをうまくやり過ごす工夫を続けるしかない。いつか、お互い好きなものの話をできるようになる日まで。
そんなことを思いながら追いついて、ふと気になって聞いてみた。
「警部の好きなものってなんですか?」
なんでそんなことを、とも言わず、
「食うこと、寝ること、ぼうっとすること」
さらりと答えが返ってきた。もうちょっと、取っ掛かりになるような答えが欲しかった。
「あとは、猫」
「えっ」
意外だ。
「一緒に寝ないかと誘ってくるから一度だけ布団に入れたが、あれは暖かかった」

Sign in to participate in the conversation
ichinyo.site/但馬守に斬られたい人たち

「こっちに一如して」などと言っていたらドメインが取れることに気づいてしまったので作ったインスタンス