晩御飯の時間だけれど、一日中食べてはお喋りしてを繰り返していたから流石にお腹が空いていない。おせち料理を少しずつつまみつつ、いつのまにか現れたお寿司に端を伸ばす。
「袖が」
横から但馬の声がしたかと思うと手首を捲り上げられた。
「わー、ありがと」
振袖が危うく醤油べったりになってしまうところだったらしい。お皿を避けつつほっと一息つく。和才はなんとかみんなにお願いできてもシミ抜きまではだいぶん怪しいから、よかった。
「エミヤ殿や北斎殿のようにたくし上げられた方がよろしいな」
「うーん、料理するわけでも描き初めするわけでもないし。着替えた方が早いかも」
そう言うと、但馬の眉間にほんの少ししわが寄った。
「駄目かな?振袖って丸一日着てないといけないものだったっけ?」
そんなこと聞いたことないけど、ひょっとすると但馬時代はそうだったかもしれないし尋ねてみる。
「いや」
そうは言いつつまだ思案げな顔をしている。でもだいたい、但馬が何考えてるかなんてわかるようになってきた。
「まだ見足りない?」
からかい半分でそう尋ねると至極真面目な顔で頷くものだから、聞いたこっちが恥ずかしくなった。
#柳ぐだ