落穂ナム
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昼下がりの図書室には小さないびきが響きわたっていた。出所を探して行くと見覚えのある煉瓦色の髪が床の上に現れる。
「シェイクスピア」
揺り起こすと、
「……おお!これはマスター、ご機嫌麗しく」
思ったより元気に話しかけられた。
「行き倒れるぐらいならちゃんと部屋に帰るか霊体化して休みなよー」
「それができればこんな体の痛い目にはあっていないでしょうな!」
笑う劇作家はその開き直りの勢いとは裏腹に起き上がる気配がない。
「床の寝心地がいいならまあいいけど」
「ふむ。それは確かになかなか。石造りの冷たーい図書室、あるいは木造りの床下天井裏をばたばたと駆け回るネズミたちもおらず命の危険もない。至極快適なものではありますが」
「が?」
「3徹していかんせん魔力不足の身、マスターには若干融通して頂きたく」
普段礼装頼みなのはシェイクスピアも知っているはずだった。だというのに手元に縋り付かれ、
「おお、憐れみ深い乙女よ!その涙か口づーー」
そこまで言ったところで固まった。後ろを見なくても、誰がいるかは分かる。
「がんば」
助けて!という視線を送るシェイクスピアに、そう一言だけ声をかけた。

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「こっちに一如して」などと言っていたらドメインが取れることに気づいてしまったので作ったインスタンス