落穂ナム
Follow

周回から戻るとトレーニングルームから出てきた一行に会った。但馬もいたけれど、ちらりとこちらに目を走らせた後はベオウルフや老師の後ろで静かに佇んだまま何も言わない。ひとしきりお互いの戦果を告げ合うともうひと殴りしてくる組や食事組に分かれて方々に散っていくなかで但馬だけがそこに残った。
「中食はよろしいのか」
やっと口を開いたと思うとそんな事を尋ねてくる。
「もうちょっと後で行くよ」
「ならばお送りつかまつる。そこまでの話であるが」
確かにどんなにゆっくり歩いても5分とかからないところなのだけれど。
「但馬は?」
「さて……あの様子では今しばらくしみゅれえたあでの散歩というわけにも行かぬ様子」
「読書かあ」
「まあ読み物であろうな。たぶれっととやらはまこと有難いものなれば」
なんて言ってる間に部屋まで着いてしまった。見上げるといつもと変わらない真顔……よりもちょっと期限が良さそうな気がする。
「……もうちょっと一緒にいたいって言ったら」
但馬の手がロックを解除して扉が開く。
「奇遇にも拙者もそのように」
そう言った但馬の口の端が、目がしっかり微笑んだまま、私を部屋の中へと促した。

Sign in to participate in the conversation
ichinyo.site/但馬守に斬られたい人たち

「こっちに一如して」などと言っていたらドメインが取れることに気づいてしまったので作ったインスタンス