落穂ナム
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夕食後のひと時、ただ但馬が座っている。とはいっても、普通に椅子なんかに座っているわけじゃなくて、坐禅を組んでいる。半眼ですっと背筋を伸ばして座るその静けさはこのカルデアのトレー二ングルームがどこかのお寺のお堂じゃないかと思えるもので、それでいて静かさを守ろうとしている意識のない、不思議なものだった。不動にして自由、ということの意味が、少しだけわかるような気がする。
ぼうっと見とれていると、ごく自然に但馬の目とあった。そして気づけばその腕の中に引き寄せられている。
「……あれ?」
思わず声が出てしまった。くつくつとした笑いが小憎たらしくて、自由になる額を結構な勢いで肩にぶつけようとしたけれどその前に強く抱きしめられて防がれた。完全に読まれているのは相手が達人なのだから仕方がないのかもしれない。ため息をついて逆にその肩に懐く。
「いかがされた」
「わかってるでしょー」
「さて……何のことか、この但馬分かりかねるが」
いつもの声でさらりとしらを切られた後、こめかみに温かいものが触れたかと思うと解放された。
「部屋までお送りいたす」
その声にぞくりとするの私も私かもしれない。

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ichinyo.site/但馬守に斬られたい人たち

「こっちに一如して」などと言っていたらドメインが取れることに気づいてしまったので作ったインスタンス