落穂ナム
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 テレビがCMに入って、立香がうんと伸びをすると、後ろのソファに寝転んでいた柳生に当たった。
「ごめん」
「いや」
気にするな、というように頭を撫でた手は、そのままさらさらと髪をすく。
「……伸びてきたかな?」
「そうか?」
さらり、さらりと手櫛を通しながら柳生は相槌を打つ。
「いい長さだと思うが」
額からかきあげてられて目を眇める立香を笑うでもなく、しかし柔らかな手つきで触れ続ける。
「やぎゅさんもいつもいい長さにしてるよね」
「俺は長いもなにも」
言葉を重ねようとした柳生の額に立香が口付ける。
「……スキ」
少し頬を染めてふへ、と笑う妻にひとつ口づけを返して、
「CM終わったぞ」
「ん」
再びテレビに向けたものの、胸の内に沸き起こるいとしさに一人呻く柳生であった。

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ichinyo.site/但馬守に斬られたい人たち

「こっちに一如して」などと言っていたらドメインが取れることに気づいてしまったので作ったインスタンス