立香が柳生の首元に顔を埋めると、柳生は柳生で立香の髪に鼻先を埋めた。
「……いい香りだ」
吐息そのままの低い響きは、ちょうど潜り込んだ寝具のように立香の心をくるむ。色はなくとも十分にあたたかなそれに寝かしつけられそうになりながらも、
「この匂い、すき?」
小さく尋ね返した。確かに今日はヘアケアを香りが気に入って買ったものに変えていたが、思いもよらないはっきりとした反応に眠気よりも期待が勝ったようだった。ただそれも一瞬のうち、ぬくぬくとしたくつろいだ空気が立香の瞼を下ろしていく。
「とても」
そう答えた柳生の目も閉じる。とうに消された部屋の電気は二人を阻まず、夜が更けるにつれ増す寒さもこの寝室は侵せないようだった。