猫やぎゅさんはマタタビ好きなんだろうか、と思ってあげてみたのが失敗だった。酔っ払ってうねうね転がり踊る様子が可愛くて、抱き上げようとしたら事故が発生。猫やぎゅさんは柳生さんになってしまった。
猫又の雄は乙女に口付けられるともう1つの姿に変わる、そんな柳生さんの声が蘇ってきたけれど、時すでに遅し。見た目はそう変わらないのに、
「……吸うか?」
目の前、いい声でおもむろにそう問いかけた柳生さんは、私の答えを待たずにごろんと寝返りを打って私を腕の中に収める。冷めてくれないマタタビは見事に柳生さんを酔っ払いに仕立て上げたようだった。
「い、えっ、結構ですっ」
「何故」
曰く、今日の装いはセーターだからそれなりに手触りも良く、いつもより大きい体で包んでやるからいいだろう、と。確かに暖かいけれども。
猫の時の延長なのか私を抱えたまましばらくゆらゆらと揺れていた柳生さんは、一向に離れる気配がないまま私を組み敷いた。
「重、い、ですってばっ」
「うん……」
今のあなたは猫じゃありませんよ、と告げてみても、うっとりとした声でひとつこたえたまま私に身を預けてくる。困った……。