休みの朝、パンが切れていたことに気づいて街に出ると、
「『本日限定朝カフェ営業中』?」
綺麗なレタリング文字が踊るカードがバーの扉に貼ってあることに気づく。昨日の夜、帰るときにはこんなのなかった。
「おはようございまーす……?」
なんとなくそうっとドアを開けてみると、
「いらっしゃい」
カウンターから教授が声をかけてきた。
「昨日の今日ならぬ昨夜の今朝とは、中々の常連ぶりだねぇ」
「マスターのコーヒー美味しいので釣られて入ったんですけど。教授だったらいいです」
からかうような口調にそのままドアを閉めようとすると、
「あっ待って行かないでッ!誰も来てくれないんだよ〜ご馳走するからさ〜」
誰も来なくてやっと来たお客にご馳走して大丈夫……?と思ったけど、お遊びだろうからいいのかもしれない。出入口の冷気が来ない、真ん中あたりの席に座る。
「泊まったんですか」
「ああ、ハンモックで寝ることになってね」
「それは……マスターもお気の毒に」
「疲れた」
不意に後ろから声がして思わず飛び上がる。振り返ると、マスターが言葉通り珍しく少しげんなりした様子で佇んでいた。