色々あってお疲れらしく、猫やぎゅさんの背中に哀愁が漂っている。思わず、
「やぎゅさん、うち泊まる?ちゅーると、いいサイズの箱があるよ」
大きなお耳がぴくっと動いて振り返る。お利口さがにじみ出る顔でてってと近づいてくると、足元でなーんと一鳴きした。連れて帰っていいということですね。よし。
一応玄関で肉球と足を拭かせてもらうと、勝手知ったる家といった体で廊下を進みワンルームの部屋に入っていく。暗くても迷いがないのは流石猫という感じがした。
手洗いうがいをしてから部屋の電気をつけて、危うく出かけた声を飲み込む。猫やぎゅさんは定位置のベッドの隅っこで丸まって寝ていた。すよすよとした寝息も丸まったその格好もなにこれ可愛い。私ガッツポーズです。
音を立てないようにそうっと部屋を出てシャワーも浴びて、それから畳まずにおいておいた段ボールに一応ブランケットを仕込む。
「ちょっとごめん」
小さく声をかけて布団に入ると、少しだけ尻尾が揺れて、あとは何もなかった。このまま一緒に寝てくれるみたいだ。私も幸せな気分で目を閉じる。
すっかり忘れていたのだ。猫やぎゅさんは、人の柳生さんでもあることを。