「はわっ」
はわっとか本当に口から出てしまって気恥ずかしさが増す。オタクか。慌てる私をよそに、柳生さんはさくっと起き上がって私の肩口を塞ぐように布団をかけ直してくれた。首元が再び温まる。
「……今日は仕事か」
何もなかったことにする大人の対応を素直に見習うことにした。ありがたい。そして申し訳ない……。
「ハイ」
「宿代は朝飯と後片付けでもいいか」
パンなら目玉焼きにインスタントスープ、米なら卵焼きにインスタント味噌汁だが、と提案された簡単メニューは私のいつもの朝ごはんで、
「オネガイシマス」
よく知られていてまた少し恥ずかしい。ともあれ素直に甘えることにした。
しかし柳生さんがこっちを見ている、気がする。
「……なんでしょう」
「……いや」
かたや布団に潜ったまま、かたや脚だけ突っ込んで座ったまま、じりじりと見つめ合う。
ようやくもたらされた答えは、
「……君が猫の姿の俺を撫でたりしたいというのはこういうことか」
というもので、そうのたまった人は2度ぽんぽんと布団の上から叩くと起き上がったときと同じ素早さで寒い廊下兼キッチンへと去っていった。
謎の納得、頂きました。