我が身さあゔぁんととなりし時より驚かれぬること多くあれど、なほ雷に打たれたるが如き事生じこの日記をしたためんとす
本丸日記
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門となる鳥居が光り、夜に沈んだ本丸の庭を照らした。近侍に命じられていた小夜左文字は、審神者の部屋を出て縁側から庭に降りる。手には行灯、慣れた様子で歩みを進めると冬の夜の寒さが肌を刺した。早く主を迎えに行かなきゃ、とその小柄な体で精一杯の歩を踏み出す。おっちょこちょいな審神者は、闇の中でなくともよく転ぶから、夜の帰還時には近侍が灯りを持って迎えに行く決まりになっていた。
しかし、今宵照らされた人影は。
「……誰?」
眉間に皺を寄せた、随分と大柄な老爺だった。時間遡行軍でも、刀剣男士の気配でもない。しかし審神者と同じような、人の気配かと言われると少し違うような気がする。得体の知れなさに、先に体が動いた。先程大きく足を踏み出した時より力強く地を蹴り、抜いた己自身を首元につき付けようとした。
しかしここでも小夜の思うようにはならなかった。刃を当てるより先に手元に小さな、次いで身体に大きな衝撃が走った。土の冷たさを感じる。