「うわー……おーう……」
サテライトキャンパスを出ようとしたら、ぱたぱたと雨粒が道路を叩き始めていた。見上げた空はどこもどんよりと暗く、風の吹いてくる方向に至っては真っ暗だ。傘は、ない。雨宿りしていても、この空模様だといつ止むかわからなさそうだった。
急ぐわけでもないけれど、お腹空いたし帰ってご飯にしたい。
食い意地に背中を押されて雨の降り始めた街角を歩く。ちょうど会社勤めの人たちも仕事が終わる時間帯なのか人が多いけれど、みんなしっかり傘を持っている。えらい。そして私、天気予報見よう。
傘をさす人混みの中を傘無しで歩くのは、割とうんざりする。更に大通りを渡るところで案の定信号に引っかかって、流石にため息が出た。
「……信号待ちの間だけでも入るといい」
不意に後ろから声がして、雨がやんだ。振り返るとうんと背の高いおじさんが、私の方に傘を差しかけてくれていた。怪しい人かと思ったけれど、身なりはきちんとしているしふわりといい匂いがした。男の人に言うのも変だけど。
「……ありがとうございます」
素直に甘えることにしてお礼を言うと、おじさんがほんの少し微笑んだような気がした。
#雨とコーヒー