雨足が強くなった。立香は「嵐は秋の季語です」と学生時代に教わったことを思い出す。
出会って2回目の秋を迎えようとしていた。変わったことといえば、一夜を過ごすのが店からマスターの部屋になったこと、そのまま週末を過ごしたり週の中日にも会うようになったこと、やっと名前と連絡先を交換したことぐらいだろうか。年の差のせいで周囲からそのように見られることは稀だったが、ようやく普通の恋人めいてきていた。
どうやら天気が崩れそうだ、ということで、特にどこに行くでもなくマスターの部屋でごろごろと過ごしている。家主は立香の膝を枕にして本を読んでいたが、いつのまにか寝息を立てていた。
ミステリアスな人だな、とその寝顔を見ながら立香は改めて思う。丁寧だけど強引で、多分甘えたがり。そして、時々得体の知れない怖さを覗かせる。そのギャップにすっかりやられていることを自覚しているが止まれない自分に、ため息をつくしかない。と、同時にばりばりと大きな音を立てた雷に、
「……ひどい降りだな」
マスターが目を覚ます。
雷に打たれているのか、これから打たれるのか。立香には分からなかった。
#immoral