「……なんかやだ」
何故かはわからないけれど、もやもやする。
「やぎゅが誰とするかなんてやぎゅの自由なんだけど……」
分かってはいるからリツカはそう付け加えた。それでも、けど、がついてしまう。じいっと見つめてくるヤギュウの視線が居たたまれなくて、リツカは丸めた体に頭を押し付けた。
「リツカ」
「……ごめん」
「怒ってなどいない」
そう言うヤギュウの声は確かに甘く柔らかくて、もう一度頭を上げる。金色の瞳がぴたりとリツカの目を見定めると、
「もうお前以外と子を成すつもりはない」
そう告げて、またべろりと鼻先をひと舐めしてきた。
「……やぎゅとじゃ子どもできないよ」
「ああ。だからそういうこともしないということだ」
つくろわれる額が、頬がくすぐったい。身体が熱い。うんと走って遊んだあとみたいなのに、もっと飛び跳ねたいような、そんな気持ち。
ふと、いつかムサシに言われた『借りるね』という言葉を思い出す。あのとき思ったことが、きっと間違いないと思える。
「やぎゅはわたしのもの?」
「ああ、そうだ」
うれしい。うれしくてうれしくて、それで身体が一杯になって。気づいたら、リツカは半獣姿になっていた。