果たして立香は布団に入るどころか部屋にも戻らず、広縁で肌を晒す羽目になった。前掛けを剥がれ帯も解かれた今、閻魔亭の仕事着ははだけるままとなっている。ひやりと肌を刺す冬の夜気よりも熱く注がれている但馬の視線に知らず知らず身体が震えた。
「流石これほどの宿を切り盛りする女将、趣味がよい」
ひとしきり首から胸元へと手のひらでなぞり甘噛みしながら愛でる但馬が呟く。
「なにが……?」
「紅梅色の着物は見目に華やか、かつ斯様にすれば肌によく映える」
うっとりとそう述べて両の乳首を口と指でこねる男に、
「……ば、か……ぁっ」
立香は抗う術もなくしがみつく。
「頬を染めながら詰られる甘さというものも知らぬとは」
全くもって恐ろしい、と但馬は苦笑した。ほんとうにこの娘は、己のそぶりがいかに無自覚にこちらを誘っているか分かっていないないらしい。
「そんなの」
「知らぬのであれば覚えよ」
かり、と色づいた突起を爪の先で引っ掻けば、漏れた吐息とともにもの言いたげな目が但馬を見上げる。それすらまた男を煽るだけだということを立香は知らないのだった。
#柳ぐだ