最初に教わった通り、マスターは首筋に触れられるのが好きだった。指で、唇で、舌で、まだ余裕があるときになぞると目を眇めほんの少し吐息をこぼす。その様子は私を追い立てるときとはまた違った色気に満ちていてドキドキした。悪戯だな、とあっという間に形勢を逆転されたり、しばらくうっとりと私の背を抱いていたり、その後どうなるかは日によって違うけれど嫌がられてはいないことは分かる。
部屋に招かれるようになって数度目、手を引かれ私からのしかかるような姿勢になった。自分でも思ったより素早く体が動いた。手を探して繋いで、舌でそこをぺろりと舐めると、
「っ……!」
マスターの首が反る。不意を打てたみたいだった。その反応が楽しくて甘噛みしてみると、低く呻くような喘ぎが返ってきて下腹が甘く疼いた。調子に乗って、そこに口付けたままちゅ、と何度も吸い上げるけれど反撃される様子はない。珍しくマスターの息がもう荒くて、嬉しくなる。
ふと何か残したくなった。顔を上げて、
「痕、つけてもいいですか」
薄く笑ったマスターが返事がわりに反らした首筋はとても美味しそうで、私はゆっくりと口付けた。
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反転 Show more
不意を突かれた。彼女がこんなに早く素早く動けるなどと予想だにしていなかった。首筋からもたらされる甘美な感覚に一気に酩酊したような心地になる。舐める舌の生暖かく濡れた感触に緩められた後に硬い歯を立てられ、かと思えば柔らかく啄ばまれる。
かつてはこんな緩急のつけ方を知る娘ではなかった。その事実に改めて感じ入ってしまい、興奮する。
年甲斐もなく喘がされてしままってはいるが力づくでねじ伏せるのも勿体なく、どうしたものかと思っていると立香が顔を上げた。痕をつけてもいいかと尋ねてくる。かわいい独占欲か何なのか分かりかねたが、返事がわりに首筋を伸ばし誘った。すぐに吸いついてきたその頭を、髪を撫でる。吸われる首筋も、髪の手触りも、のしかかる重みも暖かさも気持ちよかった。
痕がついたのか、顔を上げた顎をすくって唇を塞ぐ。舌をねじ込んで上顎をひと舐めすると、先ほどまでの強気は何処へやら、すぐに身体が崩れて全てが俺にのしかかってきた。味わい、身体を返しながら、どこへ痕をつけてやろうか夢想する。
ちらりと視線があった。すっかり潤んだ瞳が、好きにしろと訴えていた。
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