旅行帰りのぐだちと養父柳 Show more
「ただいま……いつの間に秋来たの……」 つい先日までの猛暑を予想しながら旅行から帰ってきてみれば、空気はすっかり秋めいていてむしろ凍えそうな心地だった。 「暦の上では上旬には立秋を過ぎていたがな。こうも冷えたのは今日からだ」 おかえり、と新聞を畳んだやぎゅさんが立ち上がる。 「羽織りものが要るか?俺のでよければそこにある」 「……借りますぅ〜」 薄物をどこにしまったかパッと思い出せなくて薄手のシャツをありがたく羽織らせてもらうことにした。少し煙たいあたり、不在中は悠々と一服していたのだろう。……別に止めてもいないのだけれど。 家主なんだからもっと勝手にしてくれていいのになあ、と思いながらやぎゅさんを見ると、しゅんしゅんとケトルが鳴っているのをじっと見つめていた。 「……お土産、甘いやつから行きますか?」 「ああ」 間髪入れずに返事が返ってくる。これは相当お土産期待値が高そうだぞ、と思いながら、私はお土産の詰まった紙袋から一番甘そうなお菓子を物色することにした。
続いた Show more
「……美味い」 合格が出て内心ほっと胸をなでおろす。ありがとう駅のお土産コーナー。ありがとう呼び込みのお姉さん。 「チョコが濃いめで甘くて美味しいよね」 「かといって甘過ぎないから飲み物をうんと濃くする必要もなくていい」 そう呟いたやぎゅさんは齧っていた焼き菓子の残り半分を平らげると再び立ち上がった。戻ってくると手にはウイスキーの瓶とグラスがふたつ、マドラーがひとつ。 「俺は紅茶で割るが」 言いながらてきぱきと飲みかけだったアイスティーを氷ごとグラスに移してウイスキーを注いでいる。同じ琥珀色でも異なる色味がとろりと溶ける様子が綺麗で、 「……じゃあお土産話、聞いてもらいましょう」 「喜んで」 やぎゅさんからマドラーを受けとって同じように割る。作り終えた私のグラスに、 「……無事の帰宅に」 やぎゅさんがすかさずこつんと自分のそれを重ねる。 「……過ごしやすい夜に」 「ほんとにな」 私の返しに相槌を打って一口あおると、ほんの少しだけいそいそとしたそぶりで焼き菓子の包みを開けている。妙な可愛らしさに笑いをこらえながら、私ももう一つ手をつけることにした。
「こっちに一如して」などと言っていたらドメインが取れることに気づいてしまったので作ったインスタンス