フランス(上) Show more
立香がカルデアから籍を抜いた、と言っても、その功績に変わりはない。ましてお供のサーヴァントが常時共にいるともなれば尋常ではない。更に、どういうわけかその界隈の名家達も、普段は人を人とも思わぬ争いを水面下で繰り広げているところをこの娘に対しては無条件無制限に保護している。
そんな娘が近くに来るともなれば、一目見て見たいと思うのが人の性というもので。
「おいしかったねー」
ふふ、と笑いながら立香がアパルトマンの階段を上がる。
「飯につられて会食を受けたのだから良かったじゃないか」
「あっ、私だけが食いしん坊みたいな言い方した〜」
階段でくるりと振り返って口を尖らせる立香を、ヒヤヒヤしながら但馬が見ていた。
「危ないぞ」
「私の愛しい愛しい夫が受け止めてくれるから大丈夫です♡」
そんなに酒は嗜んでいないように見えたが、空腹時に飲んだからか十分酔っ払っているらしい。
「ね、たじま?」
手すりにつかまってゆらゆら揺れながら、そうでしょう、呼びかける彼女を月明かりが照らし、すっかり成熟した女の美しさに但馬が見惚れる。
「……ああ」
思わず手を伸ばした。
フランス(下) Show more
「ん、わっ……!?」 立香も手を伸ばしたところまでは良かった。しかしふらふらと重心の定まらない身、階段の上でぐらりと揺れる。落ちると思いきや、すんでのところで手すりにつかまり尻餅をついた。身代わりになったハイヒールの片方が、少し下の踊り場まで飛んでいく。 「……びっくりした」 「馬鹿」 短く叱った但馬が、それでも踊り場までヒールを回収しに行った。 「但馬から手を出したくせに〜」 「……そうだな」 一理ある抗議に、それでもため息を一つついて階段に座り込んだままの妻の前にひざまづく。 「履かせてくれるの?」 「いいや」 立香の期待とは裏腹に、にべもない返事が飛んでくる。なーんだ、と頬を膨らませていたら、もう片方のヒールも脱がされた。 「え、ちょ」 慌てる間も無く、露わになった爪先を恭しく両手で包んだ但馬が足の甲に口付け、 「酔ったお前に歩かせようとした俺の誤りだった」 ひょいと片腕で立香の身体を抱え上げた。 「帰るぞ」 「……うん」 二人の目線はすっかり同じ高さになった。見つめ合い、ふと瞳を伏せて唇を重ねる。夜と同じ静けさで互いを慈しみあうキスだった。
「こっちに一如して」などと言っていたらドメインが取れることに気づいてしまったので作ったインスタンス