私がストレス解消の為に理不尽な理由で怒ったその日の夜の内に、宗矩さんは「仕置き」をする。仕置きなのだからその時の私は、宗矩さんのことをサーヴァントでも夫でもなく、「ご主人様」としてそう呼ばなければならない。だから、名前さえも呼ぶことができない。名前で呼んでしまったら、また罰が増えるだけだ。そして今日も、ご主人様の膝の上で私は仕置きを受けていた。
「そろそろお前がどうしようもない変態だと、認めたらどうだ?」
パァン、と乾いた音が部屋中に響く。こんなにもお尻は痛いのに、どうして平気な声色をしているのだろうか。ぶっただけでは武骨な手は痛まないということなのだろうか。
「ち、ちがうっ、ちがうもんっ!」
「違う? そんな事はあるまい」
また、音が響く。痛い、痛いのに、こんなにも気持ちいい。頭がふわふわして、もっと気持ちよくなりたいと腰が動いて尻を高く掲げる。
「また達しているではないか……もう10回追加だな」
「い、いやだ!」
「20だな」
「やっ……」
ひい、の声と共に手が尻を打つ。絶妙に加減されているお陰で、ぎりぎり痛さよりも気持ちよさが上回る。きもちいい、と漏らした声は蕩けていた。
10年後の柳ぐだ♀。
些細なことで口喧嘩できることが幸せだと、他人にはそうは思えまいが、そう思えてしまうのは、主がこれまで進んできた道がそれほどに険しかったのだという証拠になるだろう。さて、すいーつも買った。我が家に帰ろう。
口喧嘩の発端は、テレビに出ていたアイドルの女の子が武蔵ちゃんに似ていたという理由で「宗矩さん、あの子タイプそう」とぐだちゃんが言い出したことから。 https://ichinyo.site/media/j_XybQgCJkPk51-3NbA
活きがいいタピオカは分かる……当たると痛いしむせるよね
つい先刻、童どもと一緒に小麦粉と特別な粉と卵と乳を混ぜて焼き上げた洋菓子を作り上げたが、些か多く作りすぎた故、主も一緒に如何かな
ホットケーキだね!
童はぱんけぇき、と申していたが
どっちだろ……?
十年前は口喧嘩しても勝てないからと怒りたくても怒らなかったけど、十年後にはしっかり些細な理由でも怒るぐだちゃんに安心感を覚えつつもしっかり反論するやぎゅさん……
武蔵ちゃんをからかって楽しんでいるやぎゅさんと怒っているけれどどこか嬉しそうな武蔵ちゃんを見かけて、「からかわれたことないや……」とちょっと微妙な気持ちになるぐだちゃん(やぎゅさんと付き合っている)
宗矩さんは時々、お香を焚いてくれる。お香、と言っても江戸時代の大きなものではなくて現代の小さなものだけど。カルデアでは大きかったものなのにどうして? と前に訪ねたら、部屋中が臭くなる、と真顔で言うからどう返事したものか戸惑ってしまった。竹林を思い起こさせるさっぱりとした、心地よい香りを纏った着流しを着ている宗矩さんを見ると頭がくらくらして、体が火照ってしまう。きっと、私が男ならあそこも大きくして宗矩さんに襲い掛かるのかもしれない。
風呂上がりの宗矩さんも、香を纏う宗矩さんと同じぐらいに色気がある。寝巻きも夏が近づくと着流しの格好へと変わるのだが、熱くなったからなのか胸元をはだけて湯で少し赤くなった肌を見せるのは止めてほしい。まるで俺を抱いてくれと誘っているかのようで、自分が女なのが少し心苦しく思ってしまう。だから、今日は意を決して言ってみたけれど。
「……お前がそれを言うのか」
「へ?」
気がついた時にはリビングの床に押し倒されていた。
「私が毎日無念無想の心でお前を抱き過ぎないようにと気遣っているのを知っていて、わざと言ったのだろ? うん?」
だんなさま、おめめがこわいです。
10年後の柳ぐだ♀。やぎゅさんはよ気づけ!と自分が書いているのにそう思ってしまった…… https://ichinyo.site/media/bkdS2-jJrGnI7wHQB2g
「じゃ、マッサージしてもらおっかな~」
「今日はまっさぁじ屋は開いておらんぞ」
「え?」
聞き返しても、私は既にベッドの上にうつ伏せで寝転んでしまっている。起き上がって逃げようとしても、宗矩さんとの速さ勝負には全く勝てない。動こうとした時には既に宗矩さんが上に覆い被さり、身動きが全く取れなくなっていた。
「だーめ、今日は普通に寝ます!」
「本当に嫌か」
「嫌です!!」
実を言えばそんなに嫌ではないが、ここでそう言ってしまうと付け込まれて毎日されてしまう。それは嫌だ。宗矩さんはそうしたいのかもしれないけれど、私は宗矩さんに抱かれたくて夫婦になった訳じゃない。
「分かった。すまないな、襲うような真似をしてしまった」
予想していたよりもあっさりと、宗矩さんは私の言うことを聞いてくれた。覆い被さるのをやめて、横に寝転がると大人しく布団に潜った。
「わ、わかればよろしい!」
私もモソモソと布団に入ると、胸元に抱き寄せて優しく抱き締めてくれる。
「……宗矩さんや宗矩さん」
「ん」
「ちゅー、してもいい?」
「良いぞ」
こうして今夜もまた、宗矩さんの掌の上で私は踊るのでした。
性癖に忠実に書いた結果でした
宗矩さんにああ言われたということは、翌日の朝に起きたくないとゴネても良いよということであろう! と、ポジティブ解釈した私は翌日の朝、起きたくないとゴネて予想通り宗矩さんの「そうか」を貰って悠々と二度寝をキメていた。いつもと違うのは、無意識ではなく意識がはっきりとある状態で言ったことだろうか。
起きて驚かせに行こうと思ったが、段々と瞼が重くなってくる。
「おやすみなさい……」
私はまた、眠りの世界へと入った。
※
妻が二度寝をしている時、夫は眠りが深い時に限って夜のマッサージを特別にすることにしている。
「あ……ん……」
手付きはさほど厭らしいものではないが、丹念に教え込まれた胸は敏感に快感だけを拾っていく。しかし、絶頂には決して行かせない。そのせいか、二度寝をした日はいつもより大胆になったり積極的になったりする。
人差し指で乳輪を触るだけで妻は体を震わせて息を乱すが、夫の表情は真顔のままである。ただ、妻が無意識に乱れる度に股間に膨らむものだけが男の感情を表していた。
「むねのりさん……」
幸せそうに胸の頂を固くさせながら眠る妻は、夫の密かな煩悩を知らない。
10年後の柳ぐだ♀。甘やかしたい旦那さまと甘やかされるとか幸せになるとか、そんな幸せを得る資格なんてないと考えている奥さま。 https://ichinyo.site/media/wnmXHFBAFhGPo-58q0Q
やぎゅさんあともうちょっとで絆11になりそう…!
クリアしたよ…………
耳が孕みますね(真顔)
やぎゅさんの色気に真っ赤になるぐだちゃんとわざと着物の襟をはだけてみせてからかうやぎゅさん…
けしからん……
『……そうか。杞憂で良かったな』
「はい。エルメロイさんにはご迷惑をお掛けしました」
『嫌、丁度良かった。最近、何やら時計塔の連中が怪しい動きをしていてな』
「怪しい動きとは?」
『まぁ、聖杯戦争の前段階、遺物を巡る争いをし始めようとしているらしくてな。こっちも騒がしくなりそうだ』
「大変ですね……」
『何だか偉そうな口だが……まぁ良い。達者でな』
「はい。先生も健康と睡眠には気をつけて下さいね。では、失礼します」
電話を切り、スマホを宗矩さんに渡す。スマホをベッドサイドに邑久のを見ながらベッドの上で正座をして、両手を付く。
「と、言うわけで、海外旅行に行って宗矩さんの受肉を解こうと考えていました!」
嘘を付けない辛さに耐えきれず、夕飯の後のマッサージタイムの前にとうとう話してしまったけれども、宗矩さんの表情に変化はない。
「そうか」
「……怒らないんですか?」
「怒るも何も、私を考えてくれての事だろ。一言だけ言うならば、自分で考えて決める前に相談して欲しかったがな」
「……はい」
「良い返事だ」
長くなった髪の毛を撫でると、宗矩さんは微笑んで髪の先を持って口づけを落とした。
10年後の柳ぐだ♀。いつの間に?! https://ichinyo.site/media/N-sFxodcH-H9hdZyrR4
柳ぐだ♀の沼は思ったより深かったことに気づいた時には遅かった。まったりゆったり呟いています。